子どもがプログラミングをしている姿を見て、「またエラーが出てる!」「なんで動かないの?」と困っているのを見かけることがあるかもしれません。でも、実はその「困った」という瞬間こそ、子どもたちの頭の中では、将来に役立つ大切な力がぐんぐん育っているんです。
プログラミング学習の核心は、実はこの「問題解決」のプロセスにあります。まるで探偵が事件を解決するように、一つ一つの問題を乗り越えていく。そのプロセスを、今回は3つのステップでご紹介しましょう。
ステップ1:「あれ?なんか変だぞ?」問題を特定する力
「作ったゲームが動かない!」「キャラクターが変な動きをする!」 プログラミングでは、こんな場面によく出会います。最初のステップは、まさにこの「あれ?」という感覚から始まります。
「動かない」と言っても、何がどう動かないのか? キャラクターが壁をすり抜けるのか、ボタンを押しても反応がないのか、はたまた画面が真っ白なのか...
ここでの学びは、「漠然とした『困った』を、具体的な『これがおかしい』に分解する力」です。 「問題はどこにあるんだろう?」と、自分の書いたコードを一つ一つ丁寧に見ていきます。この「細部に目を向ける集中力」は、どんな学習や仕事でも非常に役立つ基礎力となります。
ステップ2:「もしかして、こうかな?」仮説を立てる力
問題の場所が特定できたら、次はその原因を考えます。 「キャラクターが壁をすり抜けるのは、壁を『障害物』として認識する命令を忘れたからかな?」 「ボタンが反応しないのは、ボタンを押したときの命令が間違っているのかも?」
このように、「きっとこれが原因だ!」という推測を立てるのが、仮説を立てるステップです。 これは、まるで科学者が実験の前に「こうなるはずだ」と予測するのと同じです。 過去の経験や知識をフル活用して、頭の中で「こうすれば動くはず」というイメージを組み立てます。この想像力が、子どもの発想力を豊かにしていきます。
ステップ3:「よし、やってみよう!」実行と検証の力
仮説を立てたら、いよいよそれを試してみる番です。 「壁にぶつかったら止まる」という命令を書き加えて、もう一度プログラムを動かしてみます。
もし思った通りに動けば、「やったー!」という達成感とともに、その「仮説が正しかった」という確信が得られます。 もしそれでも動かなければ、「あれ?まだダメか...じゃあ別の原因を考えよう!」と、再びステップ1に戻り、新しい仮説を立てて挑戦します。
この「やってみる勇気」と「結果を見て判断する冷静さ」は、まさにPDCAサイクル(計画→実行→評価→改善)の基礎。失敗を恐れずに何度も挑戦し、その都度学びを深めていく、これこそがプログラグラミングが教えてくれる最大の財産です。
日常でも学校でも役立つ「問題解決力」
プログラミングで培われるこの3ステップの「問題解決能力」は、決して画面の中だけの話ではありません。
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日常生活で:「あれ?おもちゃが壊れた。どこが変かな?」「もしかして、ここが外れたのかも!」「じゃあ、こうやって直してみよう!」
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学校の算数で:「この問題、答えが出ないな。どこで間違ったんだろう?」「もしかして、計算の順番かな?」「もう一度、一つずつ確認してみよう!」
このように、身の回りのあらゆる「なんで?」「どうすればいい?」という疑問や課題に対して、論理的に考え、試行錯誤しながら答えを導き出す力が、自然と身についていくのです。
エラーが出て「なんで動かないの?」と困っている子どもを見ても、すぐに答えを教える必要はありません。 「どこがおかしいと思う?」「どうしたら動くかな?」と、問いかけてみてください。 その一言が、子どもたちの「問題解決能力」をさらに伸ばすきっかけになるはずですよ。
